2009年8月17日月曜日

【連載】日食を追って 2009夏 vol.2

指宿(いぶすき)を出た漁船は軽快に走り出した。海はシケていて波高は3.5mもあった。我々一行が興奮してはしゃいでいたのは最初の10分だけで、その後は激しくバウンドする船と、容赦なく照りつける日差しによって口数も少なくなっていった。地元の友人の忠告は思いっきり正しかった。二畳ほどの船室が2つあったが、前方のそれには先客がいて、後方のはエンジンの排気ガスが流れ込むため、とても居られたものではなかった。仕方なく甲板に座っていると、激しい揺れのために転がされてしまうので、その辺にあるロープやポールにしがみついていなければならなかった。また、頻繁に降りかかる海水が目に入ってひどく染みた。結局3時間ほどかかって屋久島の玄関口、宮之浦港に着いた時にはみんなぐったりと疲れきっていた。

他の客が次々と宿へ向かうのをアホ面で見ている我々にオーナーが言った。
「そうか、Y田さんらは、泊まるとこないんだったな・・・」
「・・・あれ、Mさんのお宅に泊めて頂けるんですよね?」
事前の電話で、屋久島の宿が日食フィーバーでとれなかった旨告げると、オーナーは「そんならウチに泊まればいいさ」と快諾してくれた、はずだった。
「それがな、ちょっとおふくろが体調悪くして寝込んどって、ま、泊まれんことはないんだが・・・」
そんな状況で泊めてもらうのは我々も心苦しかったので、それなら遠慮しようということになった。
「今からどこか宿の空きに心当たりはないですか?」
「う~ん。・・・あ、なんならこの船に寝泊まりしてもかまわんけど。もちろんあんたらさえ良ければ」
「ちょっと、お父さん、そんなのあんまりよ!」
オーナーの娘さんがすかさずツッコんだ。



悪乗りの好きな我々は、一瞬顔を見合わせてから無言で頷いた。
筆者は一同を代表して言った。
「是非、船に泊まらせてください」
漁船に泊まるという滅多にないシチュエーションに好奇心をくすぐられたのだった。
「本当に船でいいんですか?」
「はい、今から宿を見つけるのも無理そうだし・・・」
結局、話はまとまって、船を係留しておく一湊(いっそう)という港に移動することになった。
一湊に着くと、山側からものすごい強風が吹きつけていた。
「ずいぶん風が強いですね。天気が崩れるのかな・・・」
「ああ、ここはな、山側から風が吹き下ろしてくるんで、いつもこんなんだ」
船長が海の男特有の大らかな笑顔で言った。
我々は顔を見合わせて、力なく微笑んだ。もちろん嬉しかったわけではない。(次回に続く)

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